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カウンター天ぷらの作法|黙して揚げたてを食すのが醍醐味!
カウンターの天ぷら専門店といえば、板前さんが目の前で一品ずつ揚げてくれる高級店を想像しますよね。一般のお店とは違う世界観に気後れしてしまう人も多いのでは? しかし、「目の前で揚げる」形式こそ天ぷらという料理の肝なのです。そのおいしさを存分に楽しめる、カウンター席での食べ方を天ぷらの老舗「つな八 総本店」で取材してきました。
カウンター席の作法
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つな八では「一に油、二に食材、三に職人の腕」と言い、天ぷらは良質な油、新鮮さや産地にこだわった食材、そして板前さんの技術が試される料理とされています。カウンター席では活きたエビをその場で剥き、客に見せてから揚げてくれることも。そして、食材が一番おいしく揚がるタイミングを見極め、揚げたてを提供してくれます。なので、天ぷらが自分の前に置かれたらすぐにいただくのが作法です。衣がカラッとした「揚げたて」の状態を逃さないようにしましょう。
つな八 総本店では、テーブル席を利用する場合も天ぷらを2〜3品の小分けで運んでくれるので、あまり時間を置かずにいただきます。
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ここで、ワンランク上のカウンター通になれるコツを伝授! それは、板前さんと会話すること。「この食材はどこで獲れたものですか?」「どんな食べ方がおすすめですか?」など気軽に聞いてみましょう。寿司の旬は魚介に限られますが、天ぷらは野菜の旬も楽しめる料理。「旬の魚・野菜は何ですか?」と聞いて季節性を楽しむのが通です。王道のネタ以外に、そこでしか食べられない変わり種がある場合も。話が弾めば、板前さんがその時期・そのお店おすすめの一品を揚げてくれるかもしれません。
また、料理の値段が記載されていないお店もありますが、気になる場合は「これはいくらですか?」と聞いてOKです。
淡白なものからしっかりしたものへ
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天ぷらの素材は、味の淡白なものから、次第に味のしっかりしたものへ進むのが王道です。より繊細に味を感じることができます。コースの場合は板前さんがおいしく食べられる順番で提供してくれます。ちなみに、コースのトップバッターは王道のエビが多いのだとか。新鮮なエビを提供するつな八 総本店では、頭から尻尾まで、丸ごといただけます。
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次に、こちらも王道のイカの天ぷら。淡白かつ甘みを感じるネタです。
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続いてキスの天ぷら。ほかに、メゴチや小鮎といった白身魚も淡白な味のため、最初の方にいただきましょう。
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季節(夏)の野菜、丸ナスの天ぷら。夏はグリーンアスパラ、ミョウガなどもおすすめです。春先はふきのとうやたらの芽などの山菜類、秋は松茸などのキノコ類、冬は芋類、レンコンなどの土の中で育つ野菜がおいしくいただけます。
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こちらはインゲンの天ぷら。
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アナゴの天ぷら。アナゴやかき揚げなどは味がしっかりしているため、最後の方にいただきましょう。
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締めはエビのかき揚げ。つな八 総本店のコースでは、かき揚げ単体を白飯といただくか、写真のようなミニ天丼スタイルか、追加料金でお茶漬けスタイルにするか選べます。
また、かき揚げのようにひと口で食べきれないネタの場合、かぶりついても大丈夫。女性や気になる方は取り皿の上に移し、箸で小分けにしていただきましょう。
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天丼の食べ方は、かき揚げの上からざっくり箸で切ってOK。天丼は甘辛のタレと一緒に、お茶漬けを選べば出汁と一緒にいただけるので、味の変化を楽しめます。
塩、天つゆ、レモンのつけ方

つな八 総本店のカウンター席では天皿(板前さんが揚げたての天ぷらを置く皿)のほか、塩皿、天つゆ、おろし、梅おろし、通常の塩、わさび塩などが用意されます。
天ぷらといえば、「天つゆ派」「塩派」など薬味の好みが分かれる料理でもありますよね。この薬味、どういただくのが正解なのでしょうか?
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どのネタにどの薬味をつけるべきか――ここでは、つな八 総本店おすすめの組み合わせを紹介します。まず、エビは塩。塩皿に塩を出し、天ぷらを箸でつかんで上からつけます。このとき天皿の上に直接かけないこと。天皿には次の天ぷらがのるので、薬味で汚さないように気をつけましょう。
塩は通常の塩、わさび塩以外にもおぼろ昆布塩、ゆかり塩など、辛味や酸味といった味わいの異なる数種類が出されることも。味に変化をつけたいときに、いろいろと試しながら好みの組み合わせを探して楽しみましょう。
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続いて、キスにはおろしに梅干しを混ぜた「梅おろし」でアクセントを。塩皿に天ぷらを移し、梅おろしをそのまま天ぷらの上にのせていただきます。梅干しの酸味が口の中をさっぱりさせてくれるので、箸休めに梅おろしだけを少し舐めるという裏技も。
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ナスは天つゆで。おろしを天つゆに浸し、天ぷらでおろしをすくうようにしていただきます。ちなみに、天つゆの2度づけはアリとのこと。
薬味の定番にレモンもありますが、レモンは味が強く出過ぎてしまうことがあるため、つな八 総本店では常に置くことはしていません。一部、レモンと一緒に提供されるネタにはレモンを天ぷらの上に搾っていただきます。
天ぷらに白ワインがおすすめの理由
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天ぷらはお酒と一緒にいただくのも楽しみのひとつ。こちらでは定番の日本酒のほか、ビール、焼酎、ワインを提供しています。苦味のあるビール、お米の甘みを感じる日本酒など、どのお酒も天ぷらとの相性は良いですが、特に白ワインには酸が含まれ、天ぷらでオイリーになった口の中をリセットしてくれるのでおすすめなのだとか。
また、一般的に天ぷら専門店にはお酒のつまみも置かれています。天ぷらはどうしても口の中に油が残ってしまうため、刺身など繊細な味の料理は最初にいただくのがベター。
一見シンプルな料理ですが、板前さんの技や四季折々の食材、薬味のレパートリーの多さなどたくさんの楽しみ方がある天ぷら。ぜひカウンター席でその奥深い世界を体験してみてください。
※掲載情報は、2022年8月時点のものです。価格等は変更になる可能性があります。
大正13年創業の天ぷら専門店。上質なごま油と食材の鮮度にこだわった江戸前天ぷらをいただける。老舗ながら、アイスクリームの天ぷらや牡蠣をピーマンに包んだ「牡蠣ピーマン」など、つな八流の変わり種も魅力。全国に23店舗を展開。